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ジュゴンとは 沖縄で絶滅寸前?台湾での再発見に注目

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「ジュゴンって結局どんな動物なの?」「沖縄で絶滅したって本当?」「台湾で見つかったのはなぜ?」

そんな疑問を持つ方が、近年急増しています。2024年、台湾・台東県でジュゴンが94年ぶりに発見されたというニュースは、かつて日本・沖縄でも生息が確認されていたこの動物に再び注目を集めました。沖縄ではすでに“絶滅寸前”とされるなかでの台湾での再発見は、多くの関係者や市民に衝撃を与えたのです。

ジュゴンとは、海に生きる哺乳類でありながら「人魚伝説のモデル」とも言われ、温暖な浅海域に依存して暮らす非常に繊細な生き物です。しかし、海洋開発や基地移設、海藻類の減少などによって、その数は減り続けています。特に沖縄では、1990年代には数頭の確認がされていたものの、2020年代には目撃例もほとんどなくなりました。

著:今泉 真也, 写真:今泉 真也

本記事では、「ジュゴンとはそもそも何か?」という基本から、沖縄での現状、そして台湾での再発見の意義までを詳しく解説します。ジュゴンの命運が示す環境問題や、国際的な保護活動の可能性にも触れながら、私たちが今できることを一緒に考えていきましょう。

ジュゴンとは何か?神秘に包まれた海の生き物

1-1 ジュゴンの基本情報と特徴とは

ジュゴンは「ジュゴン科」に属する海棲哺乳類で、体長はおよそ2.5〜4メートル、体重は約300キロにもなります。外見はアザラシやマナティーに似ていますが、尾の形状がクジラに近く、横に広がった平らな尾びれが特徴的です。

最大の特徴は、その食性にあります。ジュゴンは海底に生える海草を食べて生きる「草食性の海の哺乳類」です。これは海洋哺乳類のなかでも非常に珍しく、生息地が限られる理由にもなっています。

また、性格はおとなしく、鳴き声などを発して仲間とコミュニケーションをとることが知られています。

絶滅危惧種に指定されており、国際自然保護連合(IUCN)レッドリストではVU(危急種)に分類。日本では文化財保護法に基づき「天然記念物」としても保護されています。

1-2 ジュゴンとマナティーの違いとは?

よく混同されるマナティーとは異なり、ジュゴンは完全に海水で生活します。マナティーは淡水にも適応しており、フロリダなどの川や汽水域にも見られるのが大きな違いです。

また、尾の形状や歯の構造も異なります。マナティーの尾は丸くうちわ状で、ジュゴンの尾はクジラのように左右に広がった三日月型をしています。

こうした違いは泳ぎ方や生活範囲にも影響しており、ジュゴンはマナティーよりも比較的広い海域を移動する傾向があります。

さらに、ジュゴンの方が寿命が短く、一般的には50年程度とされます。繁殖も難しく、妊娠期間が約13ヶ月と長く、一度に生まれる子どもも1頭だけという点で、個体数が増えにくい生態的弱点も抱えています。

1-3 世界と日本における分布と生息地

ジュゴンは、アフリカ東岸からインド洋、東南アジア、オーストラリア北部にかけて広く分布しています。とくにオーストラリア北東部のグレートバリアリーフ周辺では比較的多く確認されています。

日本では、かつては沖縄本島周辺を中心にジュゴンの生息が確認されていました。特に名護市辺野古や東村周辺の海域では、海草の豊富さもあり、ジュゴンの採餌跡が複数確認された記録があります。

しかし、2000年代以降は観測数が激減し、2020年以降には「自然死」とされる個体が海岸に打ち上げられるなど、絶滅が現実味を帯びてきました。

沖縄に生きるジュゴンの現状と課題

2-1 沖縄で確認されていた個体数と行動パターン

日本国内では、沖縄がジュゴンの唯一の生息地とされてきました。環境省の過去の調査によれば、1990年代には3頭前後のジュゴンが沖縄近海で確認されていました。

これらのジュゴンはそれぞれ識別番号で管理されており、「個体A」「個体B」などと呼ばれていたこともあります。行動範囲は限られており、辺野古から大浦湾付近にかけての浅海域を行き来していたとされます。

しかし2000年代後半以降は、音波探知や空中観察でも個体の確認は困難になり、最後の目撃情報から数年以上が経過していることから、「事実上絶滅」との認識が専門家の間でも広がりつつあります。

2-2 ジュゴンが生息しやすい海域とその環境的条件

ジュゴンは海草(ウミヒルモやリュウキュウスガモなど)を主食とするため、浅くて日光の届く、波の穏やかな海域を必要とします。沖縄周辺の特定エリアは、こうした条件を満たしていました。

ところが、近年ではリゾート開発や埋め立て、船舶の往来増加による海草場の消失が相次ぎ、ジュゴンにとっての「居場所」が減少してきました。

特に辺野古では、基地建設をめぐる工事の影響により、かつてジュゴンが食事をしていた海草場が著しく損なわれたとされています。これがジュゴンの離反や衰弱の一因と見られています。

2-3 辺野古移設問題とジュゴンの関係性

著:今泉 真也, 写真:今泉 真也

名護市辺野古での米軍基地建設(普天間飛行場の移設計画)に伴い、海を埋め立てる工事が始まったことは、ジュゴンの生息環境に大きな影響を与えました。

この問題は国際的にも注目され、米国のNGOなどが「ジュゴンの文化的・生態的保護」を理由に、日本政府に工事の停止を求める訴訟を起こす事態にも発展しました。

その一方で、現地では「実際にジュゴンはいないのだから工事は進めるべき」という意見もあり、保護と開発のバランスをどう取るべきか、長年にわたり議論が続いています。

台湾でのジュゴン再発見とその衝撃

3-1 台湾での「絶滅」認定と今回の発見の意味

台湾では、ジュゴンはかつて東部沿岸に生息していたとされますが、1930年代以降は目撃情報がなく、2022年に「絶滅宣言」が出されていました。研究者や環境保護団体の間でも「再発見は難しい」との見方が支配的だった中で、2024年2月、台東県の成功鎮沖で偶然にもジュゴンが捕獲されたという事実は、極めて大きな意味を持っています。

このジュゴンは地元漁師による網にかかって捕獲されたもので、年齢は推定4歳前後、体長約190センチと推定されています。発見直後から台湾の海洋研究機関や大学が調査に乗り出し、健康状態やDNA分析などを進めており、今後の生息域調査にもつながる重要な個体と位置づけられています。

今回の再発見により、台湾における絶滅状態が覆される可能性が出てきたと同時に、海洋環境の変化や回復の兆しに注目が集まり始めています。

3-2 捕獲されたジュゴンの詳細と沖縄との関係性

この個体については、外部的な傷や衰弱の兆候は見られず、比較的健康な状態であることがわかりました。また、研究者の初期分析によれば、ジュゴンの遺伝子型は沖縄周辺の個体と一致する可能性が高いとされています。

これは、かつて沖縄と台湾がジュゴンの生息域として海洋的に連続していた可能性を示唆するものであり、今回の発見が単なる“奇跡”ではなく、海洋生態系の回復過程にあることを示す貴重な証拠となり得ます。

また、このジュゴンが沖縄から流れてきたのか、それとも台湾近海で生まれ育ったのかという点については、今後の研究の焦点の一つです。いずれにせよ、東アジアにおけるジュゴンの生息環境と回遊ルートの解明につながる、画期的な出来事であることに間違いありません。

3-3 今後の研究や保護活動への期待と展望

台湾政府はこの発見を受け、ジュゴンの保護を目的とした特別チームを編成。地元の海洋大学や国際的な研究機関とも連携を図り、長期的な生息域の調査や保護政策の見直しに取り組む方針を発表しました。

また、ジュゴンの回遊が予想される海域については、漁業規制や保護区の設定なども視野に入れられており、東アジア全体での協力体制の構築が期待されています。

今回の再発見は単なる生物学的ニュースにとどまらず、「人と海の共存」や「海洋環境保護の可能性」について深く考える契機ともなっています。

ジュゴンとは 沖縄 絶滅 台湾をめぐる保護と未来

4-1 ジュゴンの保護活動はなぜ難しいのか

ジュゴンの保護が困難とされる理由の一つは、その生態的特徴にあります。生息環境が極めて限られ、再生産のペースも遅いため、一度数が減少すると回復に非常に時間がかかるのです。

さらに、海域の開発や海草の減少は目に見えにくい問題であり、対策を取るにも大規模な調査と協力が不可欠です。また、観光・経済とのバランスを取りながら環境を守る必要があるため、政治的・社会的な対立も避けられません。

4-2 日本と台湾が協力すべき課題とは

今回の発見が示すように、ジュゴンは国境を越えて移動する可能性があります。そのため、日本と台湾、さらには中国・フィリピンを含めた国際的な協力体制の整備が求められています。

たとえば、衛星タグによる追跡調査や、共通の海洋保護区の設定、情報共有の仕組みなどが今後の重要な取り組みになります。また、観光資源としての活用を視野に入れることで、経済と環境の両立も模索できるかもしれません。

4-3 絶滅を防ぐために私たちができること

著:今泉 真也, 写真:今泉 真也

私たちができる最も基本的なアクションは、「知ること」「考えること」「伝えること」です。

ジュゴンという存在を通して、海洋生物や環境問題に関心を持つことが、最初の一歩になります。

また、環境団体への寄付やボランティア、署名活動への参加なども一つの方法です。日常生活の中でも、プラスチックごみを減らす、海に流れ出る汚染を減らす行動を意識することが、巡り巡ってジュゴンの未来にもつながるのです。

今回の台湾での発見が教えてくれたのは、「まだ希望はある」ということです。数が減っていても、諦めずに見守ることがいかに大切か。ジュゴンという海の生き物を守ることは、海そのものの健康を守ることでもあります。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

あなたはどう思いましたか? この記事が少しでも参考になったなら幸いです。

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